お店の隣りにある蔵を
覗いてびっくり!そこには明治・大正・昭和、そして平成と、4つの時代のなかで息づいてきた、そんな逸品が保管されています。そのひとつひとつが、それぞれの時代の風景を映し出しそうな不思議な趣を発し、また老舗として長い間お店を守ってきた、先代の「粋」も感じ取られたりします。
 

福助人形
まずはご存じ「福助」。当店のお酒が「富久柏」ですから、先代がお店の象徴として置いておいた、そんなことが想像できます。
フクスケといえば靴下のメーカーとして有名ですが、最初は丸に福の字のトレードマークで足袋を販売していました。ところがある時、同じ丸に福の文字マークを使っていた和歌山の会社から「そのマークはうちが昔から使っているものなので勝手に使ってもらっては困る」というクレームが入ります。
この問題は結局裁判まで行われ、敗訴。かわりのマークを探していたある日、当時の若旦那が古道具屋の店先で福助人形を見かけ、突如としてこの人形を新しいマークにすることを思いつきます。
この人形を買って急いで家に戻りそのことを話しますと、父は自ら筆をとって福助の絵を描き、特許庁に持っていってこれを商標として届けました。そして会社名も「福助印堺足袋」と改称、この福助さんマークの足袋は全国に知られることとなりました。この時の人形は現在フクスケの社宝として大事に保管されています。
その名のごとく「福を招く」象徴として、商人から特に重用され、時代を重ねてきたことは容易に想像されます。

  ●蓄音機
若い方には全く馴染みのない代物でしょうが、私の年代ではなんとなく記憶にあるような気がします。昔のレコードプレーヤー、ん、CDプレーヤーということになりますね。
当時はSPレコードという呼び名の音源で、1分間に78回転するビニール盤の溝をおもりのついた鉄製の針で擦って音を出すという、理にかなっているようなかなっていないような、そんな状態でエノケン東海林太郎あたりを夢中になって聴いていたのだと思います。
  ●看板・・・その1
懐かしい!確か大学時代に飲んだ記憶があります。
いまや主役を焼酎に奪われてしまったウィスキーですが、一昔前は飲み屋さんにいけばやっぱりウィスキーでした。オンザロックなんて格好良く飲んでみたり(濃いだけ)背伸びしてボトルキープしてみたり・・しかし今思えば昔の方が高かった。ジョニ黒なんてのは海外旅行のお土産以外には目にする機会さえなかったような。
そして安いウィスキーの代表がこのトリス、しかもウ井スキーとはなんとも情緒ある表現ですね。特に意味はなさそうですが・・・。で、このトリス、想像以上の悪酔いをするお酒だったようです。
  ●看板・・・その2
ブリキの看板というのでしょうか。こういうのは結構コレクターが多いようですね。特にオロナミンCの看板は最高らしいです。
特にそういった趣味をもたない私としては、一体何が良いかわからないわけですが、その中に、ありました。「富久柏」の看板が。
創業時はここは造り酒屋でした。 販売だけとなっている現在は、当時の状況を知るすべはあまりないのですが、こんな私でも、その看板には先代の情念みたいなものを感じてしまいます。酒屋となった今、お酒は飲むものではなく飲んでいただくものと肝に銘じて頑張らないと。それよりも、江刺を代表する日本酒好きの私としては、自己消費(店の商品を味見と称して飲んでしまうこと)にだけはくれぐれも気をつけないといけません。
  ●まえかけ
・・・という表現にはどことなく郷愁が漂います。ようするにエプロン。酒屋にとっての制服です。
しっかりと布に印刷されているあたり、力の入れようが伺えます。スーツで何年も過ごした自分としては、こういうまえかけを巻く事自体何となく抵抗感があったのですが、人はこれ以上似合うファッションはないと断言します。(蔵のある町に私の全貌が・・・)いかがでしょう。メールをお待ちしております(笑)。